2005/09/19
みなさんはエキノコックスという寄生虫をご存知でしょうか?
エキノコックスは単包条虫、多包条虫など4種類に分類され、いずれの種類も人獣共通感染症を引き起こします。
この中で最近話題となっているのは主に多包条虫であり、エキノコックス=多包条虫と考えてもよいでしょう。
以前はこの寄生虫が存在できる(専門的には生活環が維持されるという)のは北海道だけというのが通説でした。
しかし先日埼玉県でエキノコックスに感染した犬が確認されたので新聞等で大騒ぎです。
エキノコックスは人に感染するとほとんどが肝臓に寄生し、数年から十数年は無症状で経過します。
しかしその間に寄生されたことによる肝臓の病変は次第に大きくなり、周囲の肝細胞を圧迫、肝機能障害を引き起こします。
ともすると肝臓癌と間違ってしまうような症状だそうです。
駆虫薬も存在していますが著効を示すことは少なく、外科手術による摘出がもっとも有効とされています。
しかし自覚症状が現れたときには、多包条虫が大きく増殖、転移していることが多く治癒率は低いといわれています。
主に終宿主として人への感染源となる虫卵を糞便中に排泄するのはキタキツネと犬とされていました。
エキノコックスに感染したネズミを食べることによって犬は感染します。
しかし当の犬は寄生されてもほとんどが無症状で、まれに下痢をする程度です。
エキノコックス症の診断は糞便検査による虫卵の発見、糞便の抗原検査などですが、抗原検査は検査を出来る機関が少なく難しいようです。
また虫卵の発見も実際は困難でよっぽどの専門家で無い限り無理との話も聞いたことがあります。
(ずっと関東で臨床に携わっていたので実際に見たことがありません)
ただ明るい情報もあります。犬に寄生したエキノコックスを駆虫することは難しくありません。
ドロンタールという一般的な線虫類の駆虫薬で可能です。
この薬を定期的に投与することがもっとも確実な予防のようです。
特にワンちゃんを北海道に連れて行ったことがある方はおすすめです。
めったにワンちゃんがネズミを食べることなど無いとは思いますが、一回でも自由になったワンちゃんから目を離したことがあれば・・・。