2007/12/15
日常の診療においてどこまで検査を行うべきかは非常に難しい問題です。
ここで言う検査はいわゆる身体検査ではなく、費用が発生する血液検査などの臨床検査を指しています。
どの検査が必要で、どの検査が無駄なのか?飼主さんによくされる質問ですが、我々獣医師も単純には判断しにくい、答えづらい質問です。
実際にあった事を例に挙げて一緒に考えてみましょう。
例えば「犬が嘔吐している。原因はサランラップを飲み込んだ事。」の場合はどうでしょうか?
飼主さんが知らないところでサランラップを飲んでいたので、最初は原因が分かりません。
飲み込んで間もないので、犬は元気があり、吐いてしまいますが食欲もあります。
サランラップはやわらかすぎて、おなかを触ってみても分かりません。
粘膜等の色もよく貧血は見られませんし、聴診器で音を聞いても異常がありません。
視診、聴診、触診などのいわゆる身体検査では異常なしの診断です。
薬を処方し、様子を見ますが良くなりません。サランラップが原因なので当然といえます。
しかもこの間にも犬は嘔吐をし続け、ご飯も食べられない状態なので元気もなくなってきました。
よくならないとの事で再診です。
血液の検査、レントゲンの検査を行いますが、異常が発見できません。
なぜレントゲン検査を行っているのに発見できなかったのか?疑問に思われますよね?
ここがひとつのポイントです。単純エックス線撮影(プレーンと呼ばれる)ではビニールの類は写りにくいのです。(よく写る物は例えば金属や石、骨など)
その後、バリウム造影検査にてサランラップは発見され無事にこの件は解決します。
問題はこのケースでもっと良い診察の手順があったかどうかです。
次回、事後に発生するであろう疑問点について考えていくことにします。